プラスチックの改質


 プラスチックの用途はきわめて広く,必要な性能も用途毎,部品毎に異なっ
ている。多種類のプラスチックが開発されているが,多様な用途に単純に応じ
られない場合が多い。
 そこで,性能を向上させるために,プラスチックの 改質 が行われている。
 プラスチックの改質法には,
  化学的な処理で行う 化学的な改質法 と   物理的手段で行う  物理的な改質法
 とがある。
 プラスチック材料に添加剤を混ぜて行う改質は,物理的な改質法である。

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☆化学的な改質(化学的な処理で行う改質)
 ◇物質全体を改質する場合
  ・天然ゴムにイオウを加え,加熱して三次元網目構造を形成させ,ゴムの    弾性や引っ張り強度を強める加硫化(合成ゴムの合成)。
  ・合成ゴムより多量のイオウを加硫して,伸びの少なく硬い樹脂に変える    改質(電気絶縁体であるエボナイトの合成)。
  ・セルロースを硝酸や酢酸とエステル化させ,新たな樹脂状物質に変える    再生化(ニトロセルロースやセルロースアセテートの合成)。
 ◇表面のみを改質する場合
    □薬剤処理
   ・官能基の導入(機能性プラスチック化)      樹脂表面に官能基を置換して,イオン交換樹脂や逆浸透膜のような,      樹脂に特別な機能をもたせる改質。
   ・分解,酸化(表面加工をしやすくさせる前処理)      樹脂表面を過マンガン酸カリウムなどの酸化剤で酸化分解し,表面      を粗らくし,かつ親水性基を生成させる。
  □放電加工(表面加工をしやすくさせる前処理)
      ・コロナ放電
   ・プラズマ処理

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☆物理的な改質(物理的な手段で行う改質)
 ◇延伸      成形時に,樹脂を引っ張り,結晶化を高めて,強度や弾性率の向上した   繊維やフィルムに加工するための改質。延伸(引っ張り)の仕方で2種類   の分けられる。
  ・一軸延伸
  ・二軸延伸
 ◇混合    成形前のポリマーに添加剤を混合し,樹脂のいろいろな性能を改質する   方法。なお,製品の利用・保存の環境によって異なるが,樹脂から添加剤   が分離し,樹脂の性質が変化する場合がある。
   つぎのような方法がある。ただし,カッコ内は添加剤の名前である。
  ・気体混合(発泡剤)     断熱性,吸音性,軽量化などにすぐれた発泡材が得られる。
  ・液体混合(可塑剤,安定剤など)     加工や使用中の可塑性や安定性を高めるもの。
  ・固体混合(強化剤,導電剤,充填剤など)      強度,導電性,難燃性などの性能向上化を意図したもの。
 ◇ポリマーアロイ(異種ポリマーの混合による改質)
    ◇表面加工(積層,メッキ・塗装などによる改質)
  ・積層      薄膜状の異なるポリマーを貼り合わせて成形し,強度,耐熱性などを    高める改質。
  ・塗装,メッキ     樹脂表面の安定性を高めるための加工。

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添加剤による改質

改質機能添加剤の種類
性能向上充填剤(繊維,粉末)発泡剤
潤滑油,結晶化促進剤
耐久性改良酸化防止剤耐熱性向上剤
耐光剤,各種劣化防止剤
難燃剤,耐候剤,電気特性改良剤
表面性能改良帯電防止剤,二次加工性改良剤
光沢剤,濡れ性改良剤,艶消し剤
成形性改良 可塑剤,加工安定剤,滑剤,離型剤
結晶化促進剤
着色染料,顔料


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ポリマーアロイ(プラスチックの合金)

ベース剤改良剤 ねらい用途
PPEスチレン 成形性改良電気製品シャーシ
PPEポリアミド成形性改良自動車部品
耐溶剤性改良
ポリアミドゴム,ポリエチレン 耐衝撃性向上自動車外装
寸法安定性向上
ポリアミドABS樹脂寸法安定性向上自動車外装
ABS樹脂ポリカーボネート 耐熱性向上電気製品外装
ポリカーボネートポリエステル耐溶剤性向上自動車部品
ポリカーボネートABS樹脂メッキ性改良自動車部品など
ABS樹脂塩化ビニル難燃性付与電気製品外装
ポリスチレンゴム耐衝撃性向上電気製品外装
ポリカーボネートアクリル特殊外観(パール)日用品
アセタールポリエチレン潤滑性能向上摺動部品
ポリプロピレンゴム耐衝撃性向上バンパー

中村次雄,佐藤功共著「初歩から学ぶ プラスチック」(工業調査会刊)より転載

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○充填剤(強化剤,補強剤)
  成形品の強度や各種性能を補強したり,成形品中のポリマー含量を減らす  ために加える。つぎに示す有機系・無機系のものがある。
 ◇有機系    フェノール樹脂やメラミン樹脂などに,成形品の強度を与える目的で,   木粉,パルプおよび積層品の紙,織布が,古くから配合されている。
 ◇無機系    ゴム弾性,耐摩耗性,寸法安定性,熱膨張係数,電気的性質,耐熱性,   耐薬品性などの補強や価格を下げるための増量剤として使われている。
   多量に使われるのは,安価な炭酸カルシウム(石灰石)。他に,ガラス,   タルク,シリカ,マイカ,金属粉,金属酸化物などがある。
   最近では,複合材料,エンジニアリングプラスチックの軽量化などに,   ガラス球,エポキシ樹脂硬化物球などの微小中空体が使われている。
      

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○発泡剤
  成形前のポリマーと混合し,成形時に加熱や加圧により発泡させて,軽く  て断熱性の高い樹脂にするため加える。発生する気泡が連続泡となる無機系  と独立泡となる有機系がある。
 ◇無機系    炭酸アンモニウムや無反応性のN2ガスを加圧して吹き込む。
 ◇有機系    適当量の発泡剤をポリマーに練り込み,型入れをした後,圧縮や加熱し,   発泡剤を分解してガスを発生する。N2ガスを発生する発泡剤   には,つぎのようなものがある。
   ベンゼンスルホヒドラジン系
   アゾニトリル化合物系
   アゾカルボン酸系
   ジアゾアセトアミド系
   ニトロソ化合物系

「添加剤による改質」



○酸化防止剤
  成形加工や使用中に空気酸化されて,着色や機械加工の強度が低下するの  を防止するために加える。
  ポリマーとの相溶性が重要であり,樹脂の種類によって使われる薬品が異  なる。主にフェノール系とアミン系のものが使われている。

「添加剤による改質」



○熱安定剤
  主に,ポリ塩化ビニル樹脂の成形時に脱塩酸化(着色化)を防ぐために加  える。
  非常に多くの安定剤が使われているが,それぞれ特徴が異なっている。
  ・スズ化合物     透明性
  ・高級脂肪酸塩    カルシウム塩は長期の安定性              亜鉛塩は初期の熱安定性
  ・エポキシ樹脂    他の安定剤と併用使用
  ・亜リン酸エステル  キレート作用による併用

「添加剤による改質」



○紫外線吸収剤
  成形品がUVを吸収すると,変色やひび割れが生じて,強さや伸びが低下  する樹脂があるために加える。
  吸収剤としての条件は,吸収波長が300〜400nmであり,かつ吸収係数が大  きく,さらに光や熱で分解せず,プラスチックの主剤に溶けやすいことであ  る。
  吸収剤は,いずれも芳香族誘導体に発色団(C=N,N=N,N=O,  C=O)や助色団(NH2,OH,SO3H,COOH)をもつ化合物であり,  UVを吸収して分子内転位を起こして安定化させる機能をもっている。
  2-ヒドロキシベンゾフェノン系
  トリアゾール系
  サリチル酸誘導体系
  アクリロニトリル誘導体系
 などの化合物が使われている。

「添加剤による改質」



○難燃剤,耐燃剤
  他の物性を阻害せずに,難燃性を高めるために加える。
  一般にラジカル捕集剤が多く,つぎのようなものがある。
 ◇無機系    酸化アンチモンとその代替品(メタホウ酸バリウムなど)などがある。
   アンチモン系は,ガラスフィルムをつくり,空気を遮断して難燃性を高   める。
 ◇有機系    ハロゲン系化合物,リン酸エステル(とくにトリクレジホスフェート:   TCP)などがある。
   ハロゲン系は空気の供給を妨げ,TCP系では燃焼系の温度を下げて,   難燃性を高める。

「添加剤による改質」



○帯電防止剤
  プラスチックは電気絶縁性能が高く,静電気の発生を避けられない。その  ため成形加工に支障となったり,ゴミ混入や表面付着で,商品価値が下がる  おそれがある。特に,ポリエチレンやポリスチレンなどの極性の少ないポリ  マーには静電気が起こりやすい。この静電気の蓄積防止のために加える。
  主に,プラスチックと相溶性をもち,かつ安定で効果が長持ちする界面活  性剤が広く用いられている。
  混合の仕方は,樹脂中に練り込む,塗布,浸漬,吹き付けなどの方法や皮  膜を形成する方法もある。
    界面活性剤は,プラスチック表面に配列し,連続相を形成して,表面の電  気伝導度を高め,静電気を速やかに放電させて電気の蓄積を防ぐ。

「添加剤による改質」



○可塑剤
  主剤ポリマーと溶け合い,その加工を容易にし,成形品に柔軟性を与える  働きをする。添加量の多少で,硬軟を自由に調節することができる。このよ  うな可塑剤を配合して可塑性を調整する方法を外部可塑化法という。
  これに対して,ポリマーの共重合や側鎖導入などで,分子内に可塑性を与  える方法(内部可塑化法という)もある。
  主な可塑剤は以下のとおりであるが,樹脂や用途に応じて選択される。
  ・フタル酸ジエステル(広く用いられる)
  ・ジオクチルフタレート(ポリ塩化ビニル,その他に広く用いられる)
  ・他に,ブタノールジエステル,脂肪族二塩基性エステル,リン酸エステ    ル,エポキシ化脂肪酸エステルなどがある。

「添加剤による改質」



○着色剤
  色づけをして製品の価値を高めるために加える。着色力や分散性などにす  ぐれ,耐光性,耐熱性,耐溶媒性があることが要求される。食品容器,包装  用では,無害であることも必要である。
  使われる着色剤は,ポリマーによって少し異なっている。たとえば,ポリ  塩化ビニルには,つぎのような着色剤が使われている。
  ◇赤色    ・有機顔料を金属(Ca,Mg)で反応させたもの    ・アゾ基をもつ難溶性アゾ染料
  ◇黄色     カドニウムイエロー,クロムイエローなどの無機系
  ◇青色     フタロシアニンブルー
  ◇白色     チタン白


「添加剤による改質」