1999年度国語学概論

課題「男女の別れの場面を書く」

 

1 「男女の別れ」 982243も

 六畳一間のぼろアパートの床に 彼は横になっていた。床の傍らには長年連れ添った彼の妻が精一杯の微笑みを顔いっぱいにたたえながら 無言でたたずんでいる。彼らの手はしっかりとつながれていた。
  「 ありがとう 」
  「 幸せでした… 」
嗚呼 たったそれだけの言葉を交わした二人の顔の なんと幸せそうなことよ。
静寂を切り刻む時計の音は 彼らが築いてきた思い出を再び積み上げていくかのように響き 春のやわらかな日差しは二人の新たなる旅立ちをむしろ祝福しているようにも感じられた。



2 「男と女の別れ」 994302坂

男の住むアパートの部屋は、ピンと空気が張りつめて、重々しい雰囲気に包まれていた。ただ、部屋の窓から差し込む夕陽の光だけが、まぶしくて明るい。男は、自分の気持ちを理解してくれない女に、ほどほど愛想がつきていた。ついに、男が口を開いた。
「もう、お前にはつき合いきれない。限界だよ。」
「そう……わかった。」
女は説得する気力も失って、部屋を後にした。



3 「男と女の別れ」 984354中

もう二時間近く、二人はフロントガラスにたたきつけられる雨粒を見つめていた。
落ちては砕ける激しい雨。だが、二人の心は静かだった。最終列車が来る時間はせまっている。もう二度と会わない覚悟で、
「さよなら」
女はドアを開け、土砂降りの中を走り去った。
「さよなら」
男は車を急発進させた。



4 「男と女の別れ」 984352清

ある夕暮れ時のこと。その夕日に照らされた男の顔は困惑していた。いつきりだそうか迷っているようにもみえた。沈黙が続いた。そして、とうとう言った。
「好きな人できてん。」
女は一瞬、目を大きく開け、そして寂しそうな表情になった。「それじゃ私らもうあかんな」
男はその言葉を聞き、何も言うことができなかった。そして二人は立ち上がり、別々の方向を歩き始めた。夕日が傾き始めていた。



5 「男と女の別れ」 984353瀧

「ごめん、他に好きな人がいるから。」
しばらく考え込んでいた男がやっとそう答えた。
今までの友達関係はその一言でもろく崩れていった。
女は、澄み切った夜空の遠くに投げ出されたような言い表す事の出来ない孤独を感じた。
「そっか……ごめんね。じゃ、バイバイ。」
涙をこらえてやっとの思いで女は返事した。
そして、もう二度と会うことのできないさみしさを断ち切るように電話を切った。



6 「男と女の別れ」 984355前

空港では慌ただしく人が行き交う。
笑い声や、話し声が広がるその場所で、二人だけが静かな時間を過ごしていた。
最後の沈黙と、悲しみに耐えきれず、女は言った。
「また、元気で帰ってきてね。待っているから。」
「うん。」
これが、永遠の別れになることを、女は気づいていた。



7 「男と女の別れ」 982207 上田真澄

「もう、終わりにしよう。」男がきりだした。
女はうつむき、固く手を握りしめる。
小さなバーの片隅で、沈黙が二人を支配していた。



8 「男と女の別れ」 982233 南光 香里

「眼鏡がくもるんだ」と、男は背をむけた。
岸壁にうちよせる波の音がやけに大きくきこえた。
暗がりの中で男の背が小さくうかびあがっている。
「じゃあね。」
女は男とは反対の方へあるきだした。
秋にしては少し寒い空に、星がきれいに光っていた。



9 「男と女の別れ」 982248山

寒い夜、耳にあたる携帯電話がやたら温かく感じる。電話の向こうから、ききなれた声が響く。
「じゃあ、元気で。ありがとう。」
頭の中に彼に伝えたいたくさんの言葉が、かけめぐる。しかし、出た言葉は、一言だった。
「さよなら……。」
この言葉が合図かのように、電話がツーツーという音をたてた。彼女は、ゆっくり、ゆっくりと携帯電話を、遠ざけた。温かさを惜しむかのように。そして、もうかかってこない彼の番号を、消去した。彼女は、ゆっくりと歩き始めた。



10 「男女の別れ」 982249 山

寒い日だった。降り続ける雪の白さと病室の白さは、
まるでこの世界から色という色を奪われてしまったように見えた。
「ありがとう」
ベッドに横たわる老婦人は、傍らにいた夫に微笑みながら言った。
「ありがとう」
夫は、彼女を見つめながら静かに言った。
白い世界の中に、暖かい火が灯ったようだった。
窓の外では、ジングルベルの歌が鳴り響いていた。



11 「男と女の別れ」 992103河

柔らかな日差しの降りそそぐ公園だった。子供達の歓声を何処か遠くに聞きながら、彼女はただぼんやりと座っていた。隣にいる、いつかは誰よりも大切だったはずの彼より、緑の木々からこぼれる光に、彼女の心は囚われていた。
「きっともう、ずっと前からだめになっていたんだ」
彼の声が、ふたりの間にだけ広がる静けさの中虚ろに響いた。その声に、彼女は宙に彷徨わせていた視線を足元へと降ろし、口を開いた。
「空気みたいな存在って本当は、いなくならないと気付けない存在ってことかもしれないね」
木陰のベンチは、春まだ早いこの季節には少し冷たい。暫くの沈黙の後、彼は立ち上がった。気配だけでそれを感じながら、けれど彼女が顔を上げることはなかった。
さよならも、ないまま。これからのふたりの未来のように、一度も瞳をあわせないまま彼は独り歩き出した。そうして、彼女はまた木漏れ日へと視線を戻した。



12 「男女の別れ」 982204井

空は星でいっぱいだった。大きな月も出ていた。月明かりに照らされたRinaの顔は蒼くひかっていた。
「もうやり直せないの?」Rinaが言った。
「あぁ……。」A太郎は吐き捨てるように言った。
A太郎はポケットからたばこを出して火をつけた。A太郎の顔が赤く染まった。
Rinaは泣いていた。今までA太郎と過ごした2年間を思うと、Rinaは涙が止まらなかった。
空に流れ星が一つ流れた。きれいな流れ星だった。おそらく、2年前の二人なら空をみて喜んだだろう。しかし、今の二人はもう星の光を見る余裕さえなくなっていた。
あっまた星が流れた……。



13 「男女の別れ」 982245や

男は小さく息を吐き、その場に倒れ込んだ。下腹部から流れ出る血液がコートをつたって彼の足元に真紅の海を形成した。(もう駄目かもしれない……。)それは誰の目から見ても明らかであり、また彼女もそれに気付いていた。彼は傍らに立ち尽くす彼女を一瞥し、小さく、そして優しい声で彼女に話し掛けた。
「俺は疲れた。少し眠らせてくれ……。」
彼女はことの重大さを理解しているが故に、目に涙を溜めて黙って頷くしかなかった。何か言葉を発したいと思っても声にならない。そんな自分がもどかしくもあり、憎くもあった。
「あ……。」
彼女が精一杯の力を込めて投げかけた言葉。伝えようとした言葉。そして、一緒にいてもずっと言えなかった言葉。そのたった一言が、二人を包み込んだ。
……あれからもう3年が経った。彼女は新しい恋を見つけ、最愛の夫とかわいい二人の娘に囲まれて幸せな家庭を築いている。最後の一言、それは……「あまりりす」



14 「男と女の別れ」 982251 若

空港のロビーで男は女にオルゴールをさしだした。
2週間前2人が出会ったバーで聴いた曲が流れだした。
”Whenever you listen to the meiody、remember me”
男は言い、もう二度と会えないという思いが2人をいっぱいにした。
女はふたりいつもみていた月を思い出しながら、
「旅での恋なんてもう絶対しない。」とつぶやいた。
2人はトランクをひきずりながら別々のゲートへと向かっていった。
それぞれの故郷にかえるために。



15 「男と女の別れ」 982226鈴

「用意はいい?」
彼女は彼の方を振り向くとおもむろに右手を振り上げ彼へ放った。いままでの思いを振り切るかのように。
「うっ」
彼はその場に座り込んだ。青く澄み切った空の下、彼女は1度深呼吸をし空を見上げ、そして彼に背を向けると歩き出した。その足取りは自然と軽やかになっていた。END



16 「男と女の別れ」 982230寺

 女は交差点にかかる横断歩道にあふれる人の波の向こうに立ちつくす男を見つめていた。もう男がこちらへ歩いてくることがないことに女は気づいていた。女の携帯がふるえる。
 「サヨウナラ」の文字。
遠くで見つめる男の姿が霞んでいる。
女は少しうつむいた後 表情を変えず返した。
 「弱虫」
人の波はあふれ続け、お互いの姿をうもれさせていった。



17 「男女の別れ」 982216か

男が病室に駆けつけると、女は医者に生かされていた。
男はその光景のすさまじさに圧倒された。が、すぐに我に帰り、女の枕元に駆け寄った。
男は女の手をとって握り締めた。女との思いでが走馬灯のように頭を駆け巡る。
胸が詰まって声が出ない。男はただ女の手を強く握り締めることしかできなかった。
病室は騒然としており、医者は規則正しく女の胸を打っていた。医者の額には汗がにじみでていた。医者の女の胸を打つ音が、男の心を打つ。
男は女の顔を見た。ある思いが頭をよぎる。手が震えた。男は目をつぶり、そして目を開けた。男は医者の方を向き、女の手を握り締めながら、ゆっくりうなずいた。
「ありがとう。……おやすみ。」
男がやっと口にできた言葉だった。
その時、女の目が開いた。わずかに口が動く。そして、目を閉じた。
「ありがとう。」
そう言ったように男は感じた。そう思いたかった。
ピーと高い音が病室に鳴り響く。
女の顔は安らかだった。
窓の外は抜けるような青空で、ひばりが一羽鳴いていた。



18 「男女の別れ」 982215か

寒さが増しつつある12月。
街は色とりどりのイルミネーションできらめき、誰もが幸せそうに見えた。
眩い光の中に舞い散る粉雪は、ただでさえ華やいでいる街を一層美しく演出する。
その中を一組の男女が少し距離をとり黙って歩いていく。
まるでその街にはふさわしくないかのように。
前を歩いていた男が立ち止まり、振り返らずに言った。
「元気でな。」
「うん。」
女は目にうっすら涙を浮かべながら、うつむいたまま答えた。
男は女のところに歩み寄り、自分のしていたマフラーをはずして女の首に巻くと、女から離れやがて人込みの中に姿を消した。
女はまだ男のぬくもりの残るマフラーをにぎりしめたまま、ただ立ち尽くしていた。
そして、ゆっくりとひとつ深呼吸をするとそのマフラーをはずし、近くの街路樹のうちの一本にそれを結びつけ、それにそっと触れると、またゆっくりと歩き出した。
いつのまにか雪はやみ、空にはたくさんの星が瞬いていた。



19 「男と女の別れ」 佐

忙しさですれ違いが多くなる二人。落ち着いてお互いのことを話す時間もとれず、二人の距離が広がっていく。久しぶりにあった二人は、目が合った瞬間に同じ思いを感じ取る。そして、それを静かに受け止める。二人は肩を並べてゆっくりと歩きだす。時間を惜しむようにゆっくりと。いつもと同じ、変わらない、景色の中でただいつもと違うことは一つ、別れのときが一刻とちかづいていくこと。。。
気がつけば、二人は、おきまりのコースを歩き、いつもの場所に座った。もう夕暮れになっていた。どちらからともなく、口をひらく。
「そういえば、初めて出会ったのも、この季節だったね。」
「うん。。」
ゆっくりと立ち上がり、二人は、それぞれ反対の道を歩き出す。一度も振り返ることなく。



20 「男女の別れ」 982202あ

―PM10:49―逮捕……
(なっ、なんだ、やめろよっ・・やめてくれぇ〜!)
返り血を浴び深紅に染まった俺の両手には深い後悔の手枷が纏わり付いている。手錠に映し出された街の灯り。行き交う車が織り成すイルミネーション。その反射光に映し出される俺はどんなにみすぼらしいだろう。
(お、俺だけじゃねぇんだよぉ〜!た、頼まれたんだ、頼まれたんだよぉ〜! A子だよ・・
二丁目のA子がやろうっつったんだよぉ〜!)
警官の手を振り解こうともがく俺に、強烈な痛みが走る。(ドスッ……)無様に倒れ込んだ俺の視界に蔑んだ目で俺を見つめるA子の姿がぼんやりと映し出される。
「お、おい、助けてくれよぉ〜!」
「…………サイッテー……」
A子は俺を一瞥すると二度と振り返ることなく夜の喧騒の中へと消えていった。
(違うんだよぉおい、うそだろぉ〜!まてよぉ、まってくれよぉ〜!……マジで)
『緊急車両が通ります。はいそこの白のワンボックス道空けて!!』(ファンファンファ……ン……)



21 「男と女の別れ」 992108西

とても、シンプルな別れだった。
彼女が「さよなら」と言う、僕がうなずく。
とてもシンプルだ。シンプルすぎて涙もでなかった。
一ヶ月後、彼女から結婚したという手紙が届いた。
ポストの前で僕はつぶやいた「おめでとう」
シンプルな言葉だ。僕は泣いていた。



22 「男女の別れ」 982222さ

 男と女は、女の部屋にいた。季節は冬。窓の外には雪が降っている。部屋の中はとても寒いはずなのに暖房も入ってなくて、部屋中には冷たい空気が漂っている。2人はフローリングの上に少し離れて座っていた。部屋に入ってからずっと黙ったままだ。
 もうずいぶん前から心がすれ違ってばかりいる2人。
お互いのことを想い合っているのに、いつの間にかすれ違ってしまっている。今日この部屋にいるのも、2人でこれからのことを考えるためだった。だが、2人とももう別れるしかないとわかっている。それでも、何も言わずにそこにいる2人。
 相変わらず部屋は冷たく、張り詰めた空気が漂っている。最初に入れたミルクティーも、すっかり冷めてしまっている。時計の音が大きく響いている。カチコチカチコチ、響いている。
 その時、男が口を開いた。「もう帰るよ。」
 女は、男を静かな目で見つめた。「……うん。ばいばい。」
 しばらくして、一人残った女は冷たい冷たいミルクティーを口に運んだ。窓の外に見える雪の降る空を、じっと眺めていた。



23 「男と女の別れ」 992109畠

「別れても友達として付き合っていこうね。」
彼女はやけに明るい声でそう言った。
今思えば、それが彼女の精一杯の言葉だったのだろう。
「おう、じゃあまた明日学校でな。」
その後僕らが話すことは二度となかった。



24 「男女の別れ」 986307副

彼は、「別れようよ」とぽつりと言った。それきりだった。
他のいかなる説明も言い訳もしなかった。
説明も言い訳もしない分だけ、彼は苦しいのだと感じられた。
その苦しみを彼が無言で耐えるのなら、私も耐えなければならないと思った。
「ええ、いいわ」と、私も短く答えた。



25 「男女の別れ」 982250山

細かい雨が降っていた。いつもと同じ場所、いつもと同じ時間を過ごしてるはずなのに……何かが足りない。
お互い分かっていたはずなのに、何故空虚な出会いを繰り返してきたのだろう。
一緒にいた時間の長さが、二人をつかんで離さない……泥沼だった。
「無意味だな……。」
「………………」
全てが、終わった。
新しい出会いを求めて……



26 「男と女の別れ」 992112村

 気持ちよく晴れた空には真っ白な入道雲がくっきりと浮かんでいた。
噴水のそばで二人は不自然な距離を置いて座っていた。噴水に背を向け、目をふせたまま二人は黙っていた。辺りは体育祭の準備で騒がしかった。しゃべりながら大きな板を運ぶ四、五人の男子、プリントのコピーに走り回る女子、楽しそうで、元気な声がそこらじゅうにとびかってる。だが、辺りのざわめきとは無関係に、二人は時間がとまったように、ただ座っていた。
 後ろで鯉が音を立ててはねた。女は顔をあげ、空を見ながら言った。
「……なんか、もう疲れたね」
彼女の声は明るかった。なにかあきらめたような悲しい明るさだった。噴水の水音が沈黙をやわらげた。決心したように大きなため息を一つついて、目をふせたまま男は言った。
「離れてみたほうがいいかな、俺たち」
女は空を見ていた。目に映る入道雲の形がぼやけてきた。男はこぶしを握りしめたり、無意味に指を動かしたりしてうつむいていた。もう一度鯉がはねた。女は制服についていたほこりをはらって立った。男の方を向き、始めて二人は目を合わせた。数秒見つめあってから女は後ろを向き、体育祭の準備で活気づくざわめきの中に戻っていった。



27「男女の別れ」 982234難

 ――森の中で迷っている。あたりは真っ暗闇で、深く生い繁った木々が迫り、ひとり泣きながら走っていた。――
 寒くて目が覚めて、枕元の時計を見ると午前3時をさしている。ほんの何時間か前、出ていった人のことを考える。たった1つのトランクに荷物を詰めて「じゃあ」とひとこと残していった人。
 身震いをしてベットから出ると、冷蔵庫で凍えた牛乳を少し飲んでベットに戻る。「すぐ夜が明ける」 前より広くなったベットでひとりつぶやくと、再び森で迷わないよう祈りながらかたく目を閉じた。



28 「男女の別れ」 992111増

風が冷たく感じるようになったある日二人は並んで歩いていた。でも、なんとなくはりつめた空気のなか、会話はなかった。お互いなにか予感があったせいかもしれない。どれくらいじかんがたっただろう。とつぜん、
「ねぇ、わたしもうつかれちゃったよ。いっしょにいるのつらい。」彼女はうつむいたまま、ポツリと言った。少しして
「おれもいっしょ。でもおまえといれたこと、後悔してない。すごく楽しかったよ。」
顔がぬれている彼女を精一杯だきしめながらかれはいった。



29 「男女の別れ」 982225佐

温かい食事、温かいお風呂、温かい部屋、そして、温かい彼、そこには絵に描いたような幸せがあった。
しかし、明日彼は夢を追いかけてアメリカに行く。
壊れた機械仕掛けの人形のように、私はずっとしゃべりつづけた。
黙ってしまうと泣いてしまいそうだった。
そんな私をさえぎるかのように、彼はふと私の手をとった。
「来るか?」
私は静かに首を振った。もう決めたことだから。
泣き顔を見られまいと私はベッドに潜り込んだ。
3年間毎日そうしてきたように彼も黙って隣に入った。
「明日からはもう隣にいないのね。」
彼のぬくもりを感じながら私はいつのまにか眠っていた。
カーテンの隙間から差し込む光で目を覚ますと、私はひとりだった。
ゆっくりと起き上がり窓を開けると、外には真っ白な世界が広がっていた。
私はそこで始めて、声をあげて泣いた。



30 「男女の別れ」 982240 向井祐樹

男は最後の願いを込めてつぶやいた。
「後悔しないな?」
「多分、する。でも、この1度だけにするつもり。」
その横顔は全てを悟ったようなすがすがしさにあふれていた。



31 「男女の別れ」 982239松

いつもの公園でいつもと同じように彼女の隣を歩いていた。
秋も終わりの日曜の午後、少し寒くて肩をすくめた。
「やっぱり、行ってくるよ」
「……そう、頑張って」
彼女は、僕の目をまっすぐみつめて言った。
晴れ渡った秋の空に、遠く飛行機雲が光っていた。



32 「男女の別れ」 982219 楠

 ピ・ポ・パ・ポ・ポ・パ・ピ・ぺ・ポ・ポ・パ・ぺ・ピ・プ・ピ・ポ…………
 月明かりに照らされた薄暗い公園にケータイのダイヤル音が鳴り響く。トゥルルルル・トゥルルルル・トゥルルルルル・トゥルルル・トゥルルル……・プッ・留守番電話センターにおつなぎします。……留守電だった。もう一度!
 トゥルルル・トゥルルル……今度は出るかな?
 真っ暗な部屋の中、覚悟していた彼からの着信音が2回、3回、4回、5回、とコールされる。
 ガチャ
 8回目の電話の後、ようやく電話に出る音がした。
「僕ドラエモン!!!」
「何も言わないで!!全部解ってるから。」
2人のあいだに少しの沈黙が流れた後、どちらからともなく電池が切れた。
まもなく公園に男の啜り泣きがこだました。
その頭上に、輝いているのと同じ月の下、女は部屋でドラエモンを読んでいた。横にはドラゴンボールがうずたかく積んであった。ある夏の夜の夢だった……。



33 「男女の別れ」 981169  山

 今までずっと支えてくれてた。一緒にいて落ち着いた。ずっと一緒にいたいと思っていた。でも……。
 いきなり襲った怪我。レギュラー落ち。戦力外通告。それでも励ましてくれてた。でも……。
 自分はずっと甘えていた。こいつが助けてくれると思っていた。けど、自分でないと立ち上がることはできない。もう一度挑戦するには自分の甘えを断ち切る必要がある。
 今まで支えてくれてありがとう。わがまま言って本当に悪いと思っている。けど、ここからは一人でやり直さないと意味がない。
 こうやって、自分を底まで追い込んだ。でも、もう一度這い上がってやる。そして、もう一度あいつを……。



34 「男女の別れ」 992110牧

誰もいなくなった放課後。 西日が教室を赤く照らしていた。教室の黒板の上に掛かっている大きな時計の針の音。後は部活をしている声が遠くに聞こえるだけ。カーテンがそよそよと風になびき、教壇の上にある花瓶の花がゆれる。一番後ろの窓側の席にはシャーペンで彫った「I LOVE YOU」が今も残っている。黒板の隅に書かれた「卒業式まで後0日」の文字。
「卒業だね。」
「うん、卒業だ。」
チャイムだけがいつもと変わらずに鳴り響いた。



35 「男女の別れ」 982203 有

 僕の彼女はコンビニの店員だ。今日も彼女はバイトしている。そんな仕事をしている彼女がぼくはすきだ。時計は12時をさしている、いつものようにぼくはコンビニへむかった。しかし最近あいつは冷たい、もしかしたら……
 月のきれいなよるだった。
 店につきいつものように買い物をする、そしてレジに並んだ  ピ ピ ピ……
 彼女がレジをとおす、僕はおもいきって聞いた「俺のことどうおもってんだよ……おまえは……
 「1256円になります、ありがとうございました♪」
 俺は金をはらった そしてかえった帰り道何か終わった気がした。彼女はただのコンビニの店員だ。982203でした。



36 「男女の別れ」 964355山

 曇り空はいっそう深い色に変わり、夕暮れの訪れを知らせている。今日はかなり寒い日だ。12月に入って暖かい日が続いていたが、今日の調子じゃ、雪が降るかもしれない。
 クリスマス前ということで、街全体が華やかなムードに包まれている。刳り返されるクリスマスソング。はしゃぐ子供たちの声。クリスマスが近づくと、なんだかうれしくなってくる。今年は彼と一緒に過ごすクリスマス。去年は彼のバイトで一緒に過ごせなかった。だから今年こそは、と、約束してある。
 ふと目の前に白いものが落ちてきた。――雪だ。今年はじめての雪。初雪を見れた人は、願い事がひとつかなう。そんな迷信があったことを思い出した。――どうか幸せなクリスマスになりますように…。心の中で、そうつぶやいた。
 これはイヴ3日前のことだった。
 『初雪の願い事は、かなわなかったね……』



37 「男女の別れ」 994303清

 天使が舞い降りるかのように白いぼたん雪が降り始めた。黄、赤、黄緑色の明かりが窓ガラスに映っている。クリスマスソングによっつて街が踊り出している。楽しく明るいミュージックは夜空に響き渡る。まさか、こんな日に二人の別れが来るなんて誰も知る予知はなかった。
 (ジングルベ-ル・・ジングルベ-ル……)彼女に聞こえているはずがない。
 「遠距離恋愛は、もう俺には無理だ。もう、おまえを守れない。」
彼女はナイフで胸を突き刺されても、まだ足りないくらいだった。
 「別れたくない。」
 泣きつく彼女の手を握り、そしてポケットの中へそっと入れた。肩をひくひくさせながら、震えた声で「ごめん。」という彼の声が微かに聞こえた。二人のいる場所はもう、明かりが消えかかっていた。彼はポケットから彼女の手を出すと、背を向けて歩きだした。彼女は、ぼたん雪のような大粒の涙を流しながら、最後まで彼の姿を見つめていた。
 大きいクリスマスツリーのてっぺんにいるサンタクロースだけが、二人の涙の理由を知っていた。



38 「男女の別れ」 992104小

女は何を言ったらいいのか、全くわからなくなってしまった。これ以上何を言っても無意味な事のように思えてきたのだ。言いたい事はまだけっこうあったが、これ以上の言葉を足す事によって、完全に純粋な今の気持ちに、他の悪質なそれがはいってしまうのが、ただ怖かった。
 「ばいばい。うちからきるから。ばいばい。」
 「わかった。・・・・・ばいばい。」
 女は電話をきった。女は面倒くさいことが、とても嫌いだった。面倒くさい感情も嫌いだった。だから、この結末(つまり、この別れの1シーン)は、ふたりにとって、最善であると信じていたのだ。女は最後まで、自分の道を男にも歩ませたのだ。



39 「男女の別れ」 981152藤

 電車のホームで新幹線の出発のベルが鳴っている。
「もう出るから。」
「わかってる、じゃあ。」
 電車のドアしまり彼女はいってしまった。
…………………………………………………………………………
11月8日から入院していたので遅れました。すいませんでした。



40 「男女の別れ」 982246八

 「別れよっか。」
それは、何気ない会話の中で急に出てきた。あまりに急だったので、それが冗談なのか、本気なのか、それさえも分らなかった。
「何で?」
彼女は黙っていた。
僕は一回溜め息を吐いて、空を見上げた。空は面白いくらい青く、壮大なる沈黙を保っていた。僕ら2人は透明な沈黙の中で、ただただ座っていた。太陽の光が少しだけ目にしみた。
何となく彼女の首に手をのばした。彼女は何も言わなかった。少しずつ手に力をいれていくと、ちょっとだけ顔をしかめて僕をじっと見つめた。彼女の目はとても優しかった。
なんだか悲しくなって、さらに少しだけ力を入れた。
彼女の力が抜けていくのを感じた。



41 「男女の別れ」 982211沖

「今日どこにいこっか?」
「どこか遠いところ。」
「なんで?どした?」
「バレるとあかんで。」
「心配?」
「バレたらどうする?」
「二人で逃げよっか?」
「あほ。子供が何言うてんの。」
「いつだって本気やよ。」
「もう終わりにしよっと思って。」
「突然なんやな。」
「親戚のおばさんに見つかったん。」
「えっ、いつ?」
「一ヶ月前くらいのドライブやと思う.」
「バレたからやめんの?」
「私ひとつのことに一生懸命になると、周り見えへんくなるやん。」
「うん。不器用やしな。」
「せやから、子供のこととかほったらかしになったりするんよ。」
「うん。」
「唯が熱出たり、大輝が風邪ひいたり。」
「ごめんな。」
「ちゃんと母親しよっと思て。」
「もう全然無理なん?」
「すごく考えて出した答えなん。」
「俺のこと好き?」
「・・・好きやよ。誰よりも。」
「人生って嫌になるくらい辛いな。」
「ごめんな。こんなんばっかりで。」
「世界で一番好きやよ。今までもこれからも。」
「ごめんな。私もやよ。」
「泣くな。あほ。」
「あんたもやん。」
「ええねん俺は、送ってくれるん?」
「最後のドライブやな。」
「涙のドライブや。」
「バイバイっちゃうで。またな、にしよ。」
「せやな。またな、カズヤ。」
「またな、ユカ。」



42 「別れ」 994304藤

ゴーッ キャー
絶叫をのせたジェットコースターがレールの上をすべりおちてゆく。
それを遠くにききながら男と女の乗った観覧車はじわりじわりと頂上へ向かっていた。
窓には夕日で赤く染まった海が広がっている。
女はその景色に目を奪われてうっとりとみとれていた。
ゴトン 窓からは下界が消え、海ばかりが広がった。
すると今までぼんやりと窓に目をやっていた男がふいに口を開いた。
「もうこれで会うのは最後や。」
その瞬間女の目から輝きが消えた。
そしてついにきたかという風に女は
「うん。」
と小さくうなずいた。
夕暮れと共に重い沈黙が二人を包んだ。



43 「男と女の別れ」 982218き

卒業式。
私は1人で教室にいた。
がらんとした教室を見渡してみる。
机にも、
椅子にも、
この教室には、たくさんの思い出がつまっている。
その思い出の中にはいつも、彼がいた。
コツ、コツ、コツ
廊下を歩いてくる足音が静かな教室に響きわたる。
彼だ。
私は彼の心変わりを責めないときめていた。
ただこの一言は伝えるつもりだ。
  「あなたに会えてよかった。」



44 「男と女の別れ」 982210お

アナウンスの声が聞こえる。
静かに電車がホームにやってくる。
いつもの光景。
「これが最後のバイバイだね。」そういう君は涙目だ。
何も言えない僕は、君の頭をポンポンと二回たたく。
ドアが閉まる。
そっと手を振る君を乗せて、電車は行ってしまった。
一人ぼっちになった僕は、うしろのベンチに腰掛ける。
タバコをふかしながら、相変わらずホームにやってくる電車を眺めている。
「もう二度と、君の笑顔がこの電車に乗ってやってくることはないんだ。」
今日はやけにタバコが胸にしみる。
大好きだった君の笑顔が胸につっかえて出てこないんだよ。



45 「男女の別れ」 982247山

彼は今、待ちあわせの場所へと向かっている。相手は、当然彼女であるがあまり気乗りがしない
最近、めっきり電話や会う回数が減ったからである。昨日もあまり眠れず、いろいろな想像ばかりをしていた。結局、ある程度の覚悟をきめてやってきた。彼女はもうそこにいた。
彼女も、やはり彼と同じくいい気分ではなく、昨日も最近の自分の行動や気持ちの揺れを考えて良く眠れていない。いくらかの不安と迷いを残して今日やってきた。
はじめ、二人は、いつものようにお互いの近況について話していたが、どちらも今日の本題を切り出せないでいて、核心をつかないまま無駄に時間が過ぎ、帰る頃になった。どちらともなく自分の今の正直な気持ちを話し出した。彼女は、今の自分の中での変化を本音で話した。彼女は、学校が楽しくなり出し「彼氏」という存在がべつに無くてもいいかなと思い出し手いて、しかもクラスに気になりだした子がいることをそれとなく言ってみた。彼の方は、仕事がおもしろくなり、彼女のことをもちろん大切にしているつもりだが、今は仕事をもっと頑張りたいと思っていた。しかも、仕事先に少し興味のあるひとがいることを言った。初めは、二人の別れには修羅場が起きるかなと彼は心配していたが、どちらにも納得できる理由があり、同じ心境であることがわかって少しホっとした。
会うまでの不安はすっかりなくなり、二人にはすっきりした気分があった。
「じゃあ、お互いまあやっていこっか」
「うん、またなんかあったら連絡して来いよ。いいのも悪いのも」
そう言って、二人は別れることにした。
こうして、二人は離れていったが、こんな男と女の別れ方もあるんだなとどちらも思っていた。
このあとの彼と彼女については、ご想像におまかせします。



46 「男女の別れ」 982205い

 祐一と弘美は現在21歳。付き合いはじめて4年になるカップルである。きっかけは高校で同じクラスになったこととごく単純である。鹿児島の高校を卒業した2人、弘美は大阪で福祉の仕事が決まっていた。祐一は浪人し、そのまま鹿児島に残り、その一年後、晴れて大阪の大学に合格、弘美のあとを追い大阪で一人暮らしを始めた。
 大阪の暮らしにも慣れ1年半が経とうとしていたその頃、弘美が仕事の関係で実家の熊本に戻ることになった。必死に引き止めたが、弘美の意志は固く、結局祐一は大阪に取り残されてしまった。そんなある日、祐一のPHSがなった。いつものように弘美からの電話であったが、弘美の声のトーンがいつもより低いことを祐一はすぐに悟った。ふたりの間に沈黙が続く。そして弘美が重い口を開いた。
「好きな人が・・・できたの」
「んげげ!」



47 「男女の別れ」 982235藤

風の吹き荒れる並木道。
女「もう行ってしまうのね。」
男は振り返りぎわに「じゃあ。」と言ったきり木の葉が舞い散るなか去って行った。



48 「別れ」 982229た

 ある高校の2年になる英ときゃなは同じバスケ部の部員とマネージャーだった。この2人は毎朝2人で登校してくる仲の良いカップルだった。英が朝練のあるときはきゃなもついていくくらいだった。しかし、2年になり部のキャプテンとなり進学も頭にあった英はだんだんきゃなの事を考えられなくなってきた。冬になるとその気持ちは一層大きくなり12月のある日、英は決心して夜、きゃなの家の前までいった。そして、きゃなを呼び出して言った。
「おれなあ、今自分のことしか考えられへんねん。部のことや勉強の方に集中したいから・・・
 別れよう。」
するときゃなは
「自分勝手なやつとはおもっとったけど、こうなるとは思わんかった。」
こういったあと2人に言葉は続かなかった。



49 「男女の別れ」 992101 い

 2月、卒業式が終わって友達ともひとしきり別れを惜しんだ後、いつものように2人で駅まで歩いた。駅のベンチで2人は彼女の乗る電車を待っていた。
2人は今日が2人でいられる最後の日だと知っていた。彼は地元の大学へ、彼女はとても遠く乃大学への進学が決まっていた。
今までさんざん話し合った。そして出した結果だ。
「また、電話ぐらいしろよな。」
「うん。」
彼は、しっかりとつないでいた彼女の手をゆっくり離すと、立ち尽くす彼女の背中を軽く押した。
彼女を乗せた電車が走り出す。
2人の視線は離れることはなかった。



50 「別れの場面」 992107鈴

 「トゥルルル・・トゥルルルル・・」
 その日は男の方から電話した。お互い夜十時頃になるとどちらからともなく電話するようになっていた。しかし、最近向こうからかかってくることが少なくなっている。男は気づいていた。向こうが自分に飽きているということに。だから、男は電話するのにも気が重かったが、先日約束した遊園地に行くことの話をするために受話器をあげたのだった。
 「ガチャ」
 女が電話に出た。軽い挨拶のあと、いつもの様に取り留めの無い会話が続いた。女が男の話に飽きているのは明らかだった。二人にはもう話のネタも無く、受話器から聞こえてくるのは、ときたまの愛想笑いと深い沈黙だけであった。その電話からは、昔あったような熱い愛など微塵も感じ取れなかった。しばらくして、男が例の遊園地のことを切り出した。すると女は、男が話そうとするのを止めて少し戸惑いながらも一言こう言った。
 「私、もう一緒にいても楽しくないねん。だから、会うのが辛い。」
 男は、一瞬言葉をなくしたが不思議にもそれほど動じることは無かった。予測できていたことは言え、こんなに冷静でいられることに自分自身驚いていた。そして、一言こう返した。
 「わかった。何も言うな。これからも友達でいような。」
 女の相槌を聞いたあと、男は静かに受話器を下ろした。そして、深いため息をついたあと、汗ばんでいる手に気がつき,急に虚しさが込み上げてきたのだった。



51 「男女の別れ」 994305松

 後に残った手の暖かさがまだ残っている。だけど男は、もう何時間もそこに一人で居る様な気がしていた。6年間も一緒だった女はもう男の視界からは全く見えない。
「じゃあね」これが最後の会話だった。それでも男は、もう薄暗くなり始めたその場から動けなかった。枯れた木の葉だけがただ男を包んだ。



52 「男女の別れ」 992105近

 眩しい夏につかまえた強くしなやかな指先。寂しい人ごみの街で抑えていた恋をぶつけあった。本気に傷つくこと恐れない澄んだ瞳が、雨の午前六時に出て行く僕を包んで・・・。曇る窓、優しく響かせて流れる歌が哀しかった。ふりかえる彼女を抱き寄せてもう一度キスしたかった。
 再会はすぐに訪れ、やがて迷いはなくなり、秋の扉たたくまで心寄せあい歩いていた。二人は、違う場所でしか叶わぬ夢を持っているから、わずかな時間しか残ってないと知っていた。燃え上がる想いははかなくて、逢えない日々がまた始まる。安らぎと偽りの言葉を何一つ言えないままに。約束は交わされることなく、揺れている恋は泡のよう・・。ふりかえる彼女を抱き寄せてもう一度キスしたかった。
 木枯らしが過ぎようとする頃、痩せてしまった二人の灯に誘われて彼女はやってきた。決断を吹きかけるため。穏やかな笑顔を作りながら僕は、
(出会いを悔やむことはない・・。)
と自分に言い聞かせグラスを開けた時、
「これが最後だ。」
とうつむいた。彼女は黙ったまま頷いた。
 白い息でさよならを告げた後、車に乗り込んでゆく時に、ふりかえる彼女を抱き寄せてもう一度キスしたかった。



53 「男女の別れ」 982241村

 ついに一言も声をかけられないまま、卒業式の日は来てしまった。いつも教室のベランダから、グラウンドでボウルを追いかける彼を見つめているだけだった。そう、見ているだけ・・・
 卒業式の後のホ−ムル−ムも終わり、教室の中は、お互いのアルバムにメッセ−ジを書きあいっこする人達でにぎわっていた。ベランダに出てみる。・・・・いた。・・・・やっぱり今日も青のウィンドブレ−カ−を着て、彼はボウルと遊んでいる。「かわいい。」それが2コ下の彼を初めて見た時の感想だった。だけど、いつのまにかそれは、「かっこいい」に変わっていったんだよなあ・・・・。・・よし、今日こそ声をかけてみよう!!
 にぎわっている教室を後にし、私はグラウンドに向かった。
 目の前には広いグラウンド。数人のサッカ−部員達。・・・いるよ。彼はいる、サチコ。さぁ、この2本の足であそこまで歩いていくのよ!
 コロコロコロ−。   ちょうどその時ボウルが転がってきた。走って来る彼。・・・え、彼のボウル?・・・
 ボウルは私の足にぶつかった。   コロン。
「すいませ−ん。」
 彼が叫んだ。私の足元に転がるボウル。もう目の前まで来ている彼。立ち尽くす私。
「・・・あ、・・・・・はい。」
私は足元のボウルを拾い、彼の前にそっと差し出した。彼は、両手でそれを受け取ると、ほほ笑みながらお辞儀をして、また走っていった。
 ・・・・さようなら。私の3年間。
 私は、後ろを向きグラウンドに背を向け、にぎわう教室へとまた、戻っていった。



54 音引きは「ほ」  野浪正隆

982241村 さん、
音引き 「カレー」 の 「ー」は マイナス「−」では、ありません。
変換モードになっている時ならば、キーボードの「ほ」を押すと、音引きが入力できます。
縦書き印刷した時に、みっともなくなるので、ご注意!!